企業の運営には、さまざまな管理事項があります。中でも、予算管理は最重要な項目として知られています。 そこで、この記事では、予算管理について基礎から解説します。
予算管理のステップや編成時のポイントについても触れますので、参考にしてください。
目次
予算管理とは企業における経営管理の1つで、予算を数値目標として設定し管理・分析することです。企業が経営活動を行うためには必要な要素で、予算と実績を照らし合わせることで運営の方向性を決定します。
つまり、予算管理は経営状況を把握するための指標となるものなのです。
企業の状況を把握するために、予算管理が重要であることは前述した通りです。それでは、具体的にどのような影響があるのでしょうか。
以下、予算管理の目的やメリットについて、さらに詳しくみていきましょう。
予算管理をすることで、原価や管理費、得るべき売上などを数値化できます。そして、その数値を企業の目指すべき着地点として提示できます。
経営方針や理念の解釈は、個々で幅があるため日頃の行動に直結しづらいものです。一方で数値であれば、どの立場の人にも同じように届くため、企業としての目標をスムーズに共有できます。目標の共有ができれば、それぞれの部署、目標を達成するための行動を、自主的に模索できるようになるのです。
目標達成のためにとるべき行動が見えてきたら、各部署で具体的な業務計画を立てられます。各部署がそれぞれに人材や物品、資金を効率的に配分できるように計画を練ることで、企業の改善点が明らかになるでしょう。
企業理念や戦略といった感覚的な指標よりも、実務に直接の変化をもたらすことができます。
予算管理の最大のメリットは、予算と実績を照合して分析することで経営の方向が適切であるかを確認できることです。
目標の達成がいつまでも難しいのであれば、方向性自体が間違っていると判断できます。また、計画に沿った業務内容を実行できていないのであれば、環境や設備、人材の配置などに問題があるのかもしれません。
それらの要素を見直すことで、対処すべきポイントを見つけられるでしょう。
前述の通り、予算は売上目標や利益目標になるものです。 ここでは、予算の種類について詳しく解説します。以下に挙げる各種予算をすべて合わせたものが総合予算です。
売上予算は、事業を営むことで得られる利益の推計です。将来の目標として設定される側面と、過去の実績から算出される側面とがあります。
販売業や製造業においては、単価と売上見込み数をかけることで単純計算が可能です。ただし、売上予算は市場の動向に影響を受けやすいことが特徴です。また輸出入があるときは、為替の変動も考慮しなければなりません。
そのため、一定期間ごとに見直すことが推奨されます。
原価予算は、原材料の仕入れで使う金額です。売上目標を達成することを前提として、原材料や製造の量を調整しながら算出します。
売上が増えれば、仕入れも製造も増えます。また、売上が伸びずに在庫を抱えている状態であれば、仕入れや製造にはストップをかけなければなりません。
売上と連動しているという点がポイントです。
そのため、原価予算は売上の状況に応じて、その都度見直しが必須です。
利益予算は、売上から原価を差し引いたものです。
売上が伸びない状況が、直ちに利益をマイナスにするわけではありません。たとえば、より安く仕入れることで、利益全体としてみればプラスにすることもできます。
売上状況に劇的な変化が見込めないときには、削減できる原価がないかを見直してみることで収益アップにつながります。企業としての利益を考えるときには、売上だけでなく原価コストの問題を分析することが重要です。
経費予算は、人件費や交通費、家賃など、事業の活動を維持するために必要な予算です。
売上が伸びれば、その分だけ商品の販売費や管理費が大きくなるでしょう。また、予想していたような売上がないときには、市場の実態調査を実施する必要があるかもしれません。これらの費用も経費予算として計上されます。
経費予算は売上状況によって変動するため、売上予算を踏まえた上で算出することが一般的です。
一方で、市場の動向から影響を受ける部分は少ない予算です。
予算管理と似た名称をもつ用語には、以下が挙げられます。
ここでは、予算管理とそれぞれの相違について解説します。
予実管理は、予算管理の1種です。ただし、予実管理ではより細かく、プロジェクトや事業ごとの予算と実績を管理します。
詳細に管理・分析することで、より迅速に企業としての進捗を把握できます。また、問題が生じたときには、即座に洗い出せます。予実管理表を作成しておけば、それらをリアルタイムで実行できます。
管理表は、Excelや管理システムを使って簡単に作成できます。
経営管理とは、以下のような項目の総括管理を指します。
つまり、予算管理をはじめ、生産管理や人事管理、販売管理などの各種管理の総称が経営管理なのです。
そのため、経営管理には組織のマネジメント要素も含まれます。たとえば、業務の効率化を考慮して、社内組織を再編成することも経営管理です。また、内部統制を強化するための働きかけとして、人事や設備など社内環境を整えることも経営管理です。
ただし、予算管理はそれらあらゆる管理項目のうち、最も重要であるといえます。
予算統制とは予算管理に含まれるステップで、予算と実績の差を埋めることです。
売上目標と実績との差が、何によって生じているかを分析することから予算統制は始まります。どの項目がいくら低いのかを洗い出し、数値をグラフ化して把握しやすくします。これにより、販売や製造に関して強化すべきポイントが見えてくるはずです。
強化すべきポイントに従って業務計画を練り直し、行動にフィードバックすることで事業目標の達成を目指すのです。
ここでは、予算管理の具体的な方法について解説します。予算管理には、以下の3つのステップがあります。
①予算をプランニングする
②プランを実行する
③差異分析する
それぞれ、詳しくみていきましょう。
予算のプランニングには、以下の2つの方法があります。
トップダウン方式では経営トップの意向に基づいて予算が組まれ、それを下部へと伝達します。一方ボトムアップ方式では現場の声から予算が組まれ、そこから全体の予算を組み立てます。
前者だけでは現場の負担が大きい際に気が付きにくく、また後者だけではトップの理念と一致しない事態が起こり得ます。
そのため、どちらか一方ではなく、双方からのアプローチを組み合わせることが重要です。全体の予算が編成できたら、営業やマーケティング、製造など、それぞれの部署ごとにその数字の範囲内で予算を作成します。
予算が作成できたら、実行に移ります。目標を達成するためにはどのような行動を取ればよいかを計画し、実践するのです。予算を意識して動くことで、業務の効率化を図れるでしょう。
ここでの重要なポイントは、業務内容を記録することです。どの部署で誰が何をしたのかを明確にしておくことで、実績と差が出たときにいち早く対処すべきポイントを見つけられます。また、達成を阻害しているものが環境要因にあるときも、速やかに問題点を把握し、改善を促せます。
業務として予算を実行した後は、分析して結果をフィードバックします。
分析方法としては、差異分析が適しているでしょう。これは、月次予算と実績の差異を重視して分析する方法です。売上が季節ごとに変動するのであれば、3か月に1回のフィードバックでもよいでしょう。
いずれにしても、定期的に状況を確認することで、修正すべき点をリアルタイムで把握できます。その際、業務内容の変更はアプローチの1つとして有効です。また、状況に応じて予算の見直しをすることも、実績との差異を縮める手段の1つです。
予算を組むときには、以下のような注意点があります。
それぞれのポイントを詳しくみていきましょう。
予算の根拠を、明確に提示することは重要です。
たとえば、トップダウンで組んだ予算では、算出に用いたデータを明らかにすることで現場が納得しやすくなります。また、ボトムアップでは現場の負担を恐れて過小な予算を設定してしまうことがあります。逆に志を高くもつことが優先されて、高すぎる目標を掲げてしまうこともあるでしょう。
根拠を提示することで、無理なく達成できる現実的な予算が見えてくるはずです。
年次予算だけでなく、月次予算を組むことも重要です。1か月ごとに逐次フィードバックすることで、より予算管理の精度が上がるためです。
ただし、業務内容の詳細な記録や、頻繁な予算の見直しによって負担が大きくなれば、売上に直接関係する業務に影響します。従業員のモチベーションの低下にもつながりかねません。
予算管理の目的は、事業の目標を達成することです。本質を忘れず、質のよい管理業務を継続していけるように、適度な設定を心がけましょう。
前年度のデータを参照して予算を組むときには、特別な外的要因があれば差し引いて算出することが重要です。
外的要因の一例を挙げれば、以下のようなものがあります。
前提にある条件が異なれば、適切な編成ができません。
イレギュラーな要素があったかどうか、前年度のデータを充分に確認しておきましょう。
予算管理とは、企業の目指すところを業務に反映させるために役立つものです。目標を数値化し、社内全体への共有を容易にします。また、売上目標が明らかになることで、業務の方針が見えやすくなります。
編成の際のポイントは、以下の3点です。
適切な予算の設定・管理が、企業の成長には欠かせません。
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