滞留在庫と余剰在庫は何が違う?対処法や予防策を紹介

更新日:2023年08月12日
滞留在庫

滞留在庫という言葉はご存じでしょうか。在庫管理に関わらない人はあまり馴染みのない言葉かもしれません。今回は滞留在庫の概要や余剰在庫との違い、また対処法や予防策についても紹介します。

目次

滞留在庫と余剰在庫の違い

滞留在庫と余剰在庫は混同しやすい言葉ですが、それぞれどのような意味を指すのでしょうか。

一般的に滞留在庫は「一定期間以上保管されている在庫」を指します。一方で余剰在庫は期間に関係なく「多く仕入れ過ぎた在庫」を意味します。この章では、上記の違いについて詳細に解説するため、両者の意味の違いが分からない場合は、是非ご参考にしてください。

滞留在庫は一定期間以上保管されている在庫

滞留在庫は「たいりゅうざいこ」と読みます。商品の仕入れをした後に、一定期間以上にわたり保管されている在庫を指す言葉です。デッドストックや死蔵在庫と呼ばれることもあります。滞留在庫が多いことは、どのような不都合が起きるのでしょうか。一般的に問題として挙げられる内容は、在庫の保管や管理などの余計な業務を増加させてしまうことです。また、商品は時間がたつと価値が下がってしまうため、そのような面でも、滞留在庫は速めに処分したいものだといえます。

余剰在庫との違い

余剰在庫は「よじょうざいこ」と読みます。スリーピングストックや休眠在庫といわれることも呼ばれます。余剰在庫は、単純に多く仕入れすぎてしまった在庫のことを指す言葉です。そのため、滞留在庫とは違って売れていない時期は関係がなく、多く仕入れすぎた場合には、その時点で余剰在庫として扱われます。売れ行きに関しては考慮されていないため、今後在庫が売れる可能性もあることが滞留在庫との違いです。ただし、仕入れを想定見積りより多くすると、結果的に保管する期間が長くなります。そのため余剰在庫は、多くの場合滞留在庫になりやすいといえるでしょう。

滞留在庫のデメリット

滞留在庫があることによるデメリットはあるのでしょうか。まず、在庫を管理するためにかかる費用が原因で、資金繰りが悪化するというデメリットが考えられます。また、保管場所がなくなったり、商品価値が低下したりする可能性も考えられます。ここでは滞留在庫によって生まれる、これらのデメリットについて解説します。

保管場所がなくなる

滞留在庫が原因で、倉庫の保管場所が圧迫される可能性もあります。保管場所がなくなることは、滞留在庫が引き起こすデメリットといえるでしょう。なぜなら、滞留在庫が多くあれば商品の保管が限られて、新しい商品の発注や保管ができなくなるためです。また、保管場所を別に借りている場合は、倉庫代として余分な費用がかかるでしょう。倉庫にある在庫が増えることは、管理業務が増えることにもつながります。そのため、余分な人件費や、労働時間を発生させてしまう可能性もあります。

商品価値の低下

滞留在庫が多くなると、商品価値が低下するというデメリットもあります。なぜなら、保管する期間が長くなればなるほど、時間の経過が原因で、価値が低くなってしまう可能性も考えられるためです。さらに商品次第では品質が低下したり、流行遅れとなり売れる見込みがなくなってしまうかもしれません。商品には旬やトレンドがあります。たとえ売れたとしても、価値が低くなったものを定価で売ることは難しいといえるでしょう。

滞留在庫の原因

上記の通り、滞留在庫が多いことには、さまざまなデメリットがあります。滞留在庫が発生することを防ぐためには、その原因を探ることが最も重要です。原因が分かれば、問題解決の糸口がつかめるでしょう。ここでは滞留在庫が発生する原因として考えられることについて紹介します。

余剰在庫の放置

滞留在庫とは、売れずに放置されてしまった余剰在庫です。発注ミスや、商品の売れ行きが思ったよりも伸びなかったことが原因で、発生してしまった余剰在庫をそのままにしておくと、最終的には滞留在庫になってしまいます。つまり、余剰在庫に対して何の手立ても取らずに放置してしまうと、滞留在庫が発生します。余剰在庫は、発注管理や在庫管理を正確に行えていない場合に発生します。在庫をしっかりと管理することで、余分な仕入れを防げます。

在庫と仕入れのバランスが悪い

在庫と仕入のバランスが均等でないことも滞留在庫の原因となり得ます。なぜならば在庫を正しく把握できていないと、仕入れとのバランスが悪くなるためです。在庫と仕入のバランスがとれていないと、在庫が増えてしまい滞留在庫が増える原因となります。また仕入れの見込みが間違っている場合もあります。これは需要予測の失敗ともいえるでしょう。商品がどれだけ売れるかの見極めを誤ると、結果として在庫を抱えることが増えます。

在庫管理が杜撰になっている

在庫管理が杜撰になっていることも、滞留在庫が増える原因といえるでしょう。不適当な在庫管理は、定期的な棚卸しを怠っているときに起こります。日頃から棚卸しをきちんと行っている場合には、商品がどれだけ残っているかの把握が容易にできるためです。しかし、棚卸しには労力も時間もかかってしまうのが現状です。そのため後回しにしてしまうことも多いかもしれません。棚卸しを行っていない場合には、本来在庫としてあるものを重複して注文してしまう可能性もあるでしょう。その結果として滞留在庫が増えてしまいます。

マーケティング不足

滞留在庫が増えてしまう原因として、マーケティング不足もありえます。在庫が増えるとは商品を補充する必要のない状態で、当初の想定よりも商品が売れていないことを意味します。売れていない原因としては、商品のアピールや宣伝などのマーケティングが不十分な場合もあり得るでしょう。商品には旬やトレンドがあります。マーケティングをしっかりとすることで、商品が売れる環境つくりをしましょう。

滞留在庫の予防策

商品の保管場所が少なくなったり、商品価値が低下したりする可能性のある滞留在庫。上記で説明したようにデメリットの多い滞留在庫ですが、未然に防ぐことはできるのでしょうか。ここでは滞留在庫を減らすためにできる予防策について解説します。

定期的に棚卸しをする

滞留在庫の予防策として、定期的に棚卸しをして在庫の現状把握が大切です。前述したように、滞留在庫の原因として杜撰な在庫管理があります。不適当な保管をやめて在庫の管理を把握することによって、滞留在庫を減らせるかもしれません。そのためにも定期的な棚卸しが重要です。棚卸しは労力が必要です。一方で急ぎの業務ではないため、後回しになってしまうことも多いかもしれません。後回しにすることのないように日程や係を決めて取り掛かるのもよいでしょう。そして棚卸しの際には、不良品になっている商品は早めに処分するように心掛けましょう。

最適な在庫数を把握する

最適な在庫数の把握も、滞留在庫を防ぐためには必要です。最適な在庫数の把握とは、必要な在庫数をあらかじめ理解しておくことです。商品の需要と供給や、仕入れなどの関係から最適な在庫数を把握できます。また在庫数の管理を行う際には、事前にマーケティングを通して最適な在庫数を把握しましょう。売行きの見通しが甘ければ在庫数を誤ってしまいます。仕入をする際には在庫数に合わせて在庫の管理や仕入れを行うことが重要です。

在庫管理システムを導入する

在庫を管理するシステムの導入も、滞留在庫の予防策として効果的でしょう。在庫の管理をするためのシステムを導入することで、在庫管理を自動で行ってくれます。また在庫管理の精度を上げ、最適な在庫数の把握も容易にできるようになります。その結果が自社の利益に直結することもあるでしょう。システムの導入には初期費用がかかる場合もありますが、業務を増やしたくない場合や負担を減らしたいときにはおすすめの方法です。サービスは各社さまざまなものがあるため、見積りを請求することもよいかもしれません。

滞留在庫を処分するメリット

一度仕入れた商品は、たとえ滞留在庫として持て余していても、できれば処分したくないと考えるかもしれません。一方で、処分することで得られるメリットもあります。ここでは滞留在庫を処分することで得られるメリットについて紹介します。

倉庫に余裕ができる

滞留在庫を処分すると、倉庫に余裕ができます。倉庫に余裕ができると、在庫の管理が楽になるでしょう。在庫の管理が楽になると、在庫数が把握しやすくなります。その結果、商品仕入の重複のようなミスが防げます。さらに余分な商品の仕入れを減らすことで、本当に必要な商品の仕入れが可能になるでしょう。仕入は売上に関連するため、倉庫は事前に確認しておくことが重要です。

余計な管理費用を削減できる

滞留在庫には、在庫管理するための費用も必要です。滞留在庫を処分することで、価値がなくなっていく商品に対する管理費用が掛からなくなります。商品価値が低くなる在庫のために管理費用を充てることは余計なコストであるといえます。また、処分することで余分な費用がかからなくなったぶん、費用の削減が実現できるといえるでしょう。削減した費用を他の必要な部分に充てることも可能です。

滞留在庫の対処法

上記では滞留在庫を処分するメリットについて紹介しました。ではメリットを考慮したうえで滞留在庫をなくすためには、どのような方法があるのでしょうか。ここでは滞留在庫を処分する際の方法について、いくつか紹介します。

業者回収・処分

滞留在庫は業者に回収や処分を依頼できます。専門の業者に買取や回収をお願いすれば、まとめて処分できる場合があります。滞留在庫の買取ができるようならば、多少は仕入原価の回収にもなるでしょう。一方で、在庫商品の種類次第では、処分に費用が掛かることもあります。そのため、状況に応じて、依頼する業者や処分方法を考えることが重要です。

セールで安売りする

セールとして、滞留在庫を安く販売してしまうことも手段の1つです。滞留在庫を処分する際に費用がかかってしまう場合にも、検討する価値がある方法です。商品には旬やトレンドがあります。定価で売れなくなった場合にも、安価なら購入してもらえる場合があるでしょう。そのため、安売りすることで赤字が出る可能性は高いものの、仕入原価をすこしでも回収したい場合には、おすすめの方法です。ただし、安売りすることで、商品のブランド価値を下げてしまう可能性があることも考慮しておかないといけません。

他の商品のおまけにする

滞留在庫になっている商品を、他の商品のおまけにすることも、在庫処分の方法としては有効です。他の商品のおまけにすることで、処分費用をかけずに在庫を減らせるでしょう。またおまけがつくことで、お客様からの顧客満足度が向上する効果にも期待できる場合があります。そうすると新規顧客やリピーターの獲得として役立つため、ただ処分するよりも将来性が高い方法だともいえます。一方で商品をセールで安売りするときと同様に、おまけとするときにも、商品や店舗のブランド価値を下げてしまう可能性を考慮することが重要です。

滞留在庫まとめ

滞留在庫とは、一定期間以上保管されている商品の在庫を指す言葉です。今回は滞留在庫と余剰在庫の違いや、滞留在庫が発生する原因、予防策などについて解説しました。滞留在庫は単に保管しているとデメリットになるため、処分を考えることもひとつの方法です。ただ保管するよりも、処分することで得られるメリットもいくつかあります。また、処分する際には、さまざまな方法と、方法ごとのメリットやデメリットがあります。本記事を参考にして、ご自身の状況にあった方法で対処してみてください。

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