「過剰在庫」とは、需要に対して保持している在庫が多いことを指します。過剰在庫を持つと、保管するための管理費用がかかったり、売れ残りによって廃棄してしまうと製造コストがそのまま損失となったりと、経営にも大きく影響します。 今回は、過剰在庫を持つことのデメリットと、その対処法を4つご紹介します。
小売業や製造業などの在庫を取り扱う業種において、商品の数が足りず、販売機会の損失を招いてしまうことは、企業としてはなるべく避けたいところです。しかし、損失を回避しようと商品を多く仕入れすぎると、過剰在庫を招いてしまいます。在庫の仕入れには支出が発生しているため、在庫となる商品が売れなければ、仕入れ時の支出がそのまま損失として計上されてしまいます。その結果、キャッシュフローが悪化して、収益にも影響を及ぼす可能性があります。 また、似ている用語として「滞留在庫(たいりゅうざいこ)」があります。滞留在庫とは、今後販売することが無いであろう在庫のことです。例えば、「賞味期限が切れている」といった理由で売ることのできなくなった商品は、滞留在庫として扱われます。
過剰在庫を持つと、倉庫内のスペースが占有されてしまい、管理や維持に費用がかかります。また、長期間保管することで、商品として利用できなくなることもあります。 ここでは、過剰在庫を持つことのデメリットについて解説します。
過剰在庫を保管するためには、倉庫のスペースが必要となり、維持管理に費用がかかります。負担となる費用には、在庫を保管するための倉庫の維持費をはじめ、倉庫内の温度管理による光熱費、販売・廃棄・車での輸送などにかかる人件費などが挙げられます。 また、倉庫に置き場所がなくなった場合、在庫置き場として、新たに倉庫を手配する必要が出てくる可能性もあります。
長期的に在庫を保管している間に、品質の劣化を招いてしまうことがあります。品質の劣化や破損、型崩れなどが発生すると、値引きが必要になったり、不良品として廃棄が必要になったりするケースもあり、損失を生み出してしまう可能性があります。また、在庫の置き場所がないために適切な保管環境を確保できない場合にも、品質の低下につながるおそれがあります。
余った在庫の保管・処分には費用が発生するため、経営に影響を及ぼします。また、商品は品質が落ちると価値が下がります。価値が落ちてしまえば、セールなどで価格を下げて売るしかありません。 在庫処分のためのセールを繰り返していると、利益幅が小さくなるため、会社にとって効率的な経営ができません。そのまま経営を続けると、収支のバランスが悪化して、資金繰りが難しくなってしまう可能性もあります。
前述のように、在庫管理には労力や費用がかかります。運搬や廃棄処分をする際にも、その都度人件費が発生します。また、保管している在庫の状態を確認するためにも、時間と人手が必要です。 食品のような期限付きの商品はもちろん、無機物であっても、長い時間放置している商品については、定期的に品質を確認することも必要になります。このような管理の負担が発生しないように、適正な在庫数を保つことが求められます。
商品が陳腐化してしまうことも、余剰在庫を持つデメリットの一つといえます。 陳腐化とは、商品や技術などの価値が当初よりも減ることを意味します。長い間、在庫を保管していると、技術的に遅れた商品となったり、世間の需要がなくなり商品そのものに価値がなくなったりする可能性があります。 これらは、売れ行きのいいタイミングで商品を大量に仕入れてしまうことが原因です。仕入れ時点では人気の高い商品であっても、一定期間が経つと売れるピークが過ぎてしまい、まったく売れなくなってしまうということも起こり得ます。商品の価値が低下してしまえば、大量に仕入れた商品代金の回収が難しくなります。
過剰在庫を持つことには多くのデメリットがあります。では、過剰在庫はなぜ生まれてしまうのでしょうか。ここからは、過剰在庫を抱えてしまう原因について、いくつかの観点から解説します。
商品を頻繁に出荷する場合、在庫切れを防ぐために過剰な数の商品を発注してしまうと、過剰在庫を抱えてしまう可能性があります。 トレンドや季節性のある商品については、売れ行きにピークが存在する場合があります。前回の在庫を全て捌けたとしても、次も同じように売れるとは限りません。 このように、大量発注した商品が売れずに過剰在庫として抱えてしまうということは、過剰在庫を生み出すもっとも大きな原因といえます。現在の売れ行きや需要、在庫数を比較して、一度に大量の発注をすることを控える必要があります。
在庫管理が不十分となっている場合、「在庫の状態を適切に維持できない」「在庫数の把握が曖昧になってしまう」などのさまざまな問題が発生します。 在庫数の管理が煩雑になってしまう場合には、在庫が足りていないと思い込んで過剰に商品を発注してしまう可能性があります。特に、紙ベースで在庫を管理している場合は、実際の在庫数と社内での記録情報とデータの差異が発生するリスクが高まります。 正確な在庫数を把握するために、在庫の管理方法やルールについて定めておくことが欠かせません。
需要予測ができていないと、適切な数の商品を発注できません。季節や時期、過去の販売状況などから需要を予測して、発注量・発注タイミングを検討することが重要です。 また、需要を踏まえつつ、どれくらいのペースで在庫を仕入れるか、基準を定めておくことも重要です。在庫が底を突かないようにしつつ、一度に大量の商品を発注しないように意識しましょう。在庫が多く出来てしまった場合には、次回の発注数を減らして、バランスを取るとよいといえます。
過剰在庫が発生する原因には、発注ミスも挙げられます。人間が作業をする以上、入力間違い・処理漏れなどのミスが全く起こらないという状況は考えにくいですが、紙ベースで管理している場合には、そのリスクが高まります。 人的ミスを防ぐためには、在庫管理や受発注にパソコンやツールを使用して、手作業での処理・計算を減らすことが重要です。また、社内でダブルチェックをして、人的ミスを発見しやすい体制をつくることも必要といえます。
商品の価値がなくなってしまうことも、過剰在庫につながる原因の一つです。需要がなくなり、商品自体に価値がなくなると、そのまま売れずに在庫になってしまいます。 在庫を多めに注文する流れになったときは、市場での需要について下調べをして、売り切るための期間をある程度定めてから発注するとよいでしょう。
過剰在庫を作らないためには、そもそも在庫を大量に持たないことが重要です。そのためには、「どのような商品が在庫を生み出しやすいか」を把握しておくことが大切です。 ここからは、過剰在庫を生み出しやすい商品の特徴について解説します。
サイズやカラー展開が多い商品は、過剰在庫を抱えてしまう可能性が高いといえます。 衣類のように、カラーやサイズが複数ある場合、特定のサイズや色だけが完売することがあります。人気のないサイズやカラーについては、売れ残ってしまうこともあるでしょう。 発注の際に、すべての商品区分で同じ量を仕入れると、人気のないサイズ・カラーが売れずに残ってしまい、過剰在庫化してしまいます。普段の売れ行きを分析して、あまり需要のないカラーやサイズは発注数を減らすようにすることが重要です。
小さめのSSサイズや、大きめのLLL・XLサイズなど、特別なサイズ展開をしている商品も、過剰在庫になる可能性が高くなります。 特別なサイズは、一般的なサイズと比較して需要が限定されるため、仕入れた数が売れない可能性もあります。過剰在庫化を防ぐには、特別なサイズは在庫を少なくして、売れ行きに応じてこまめに発注量を調整するとよいでしょう。
ニッチな商品であるために市場での需要が少なくなる場合には、そもそも売れずに過剰在庫化するケースがあります。 他にはない唯一の商品を売ることは、その商品が欲しいと考えている一定の方には需要があります。しかし、継続して買ってくれる方がいなくては、一定量の出荷につながりません。 販促のキャンペーンを実施したり、期間や数量限定商品として販売したりなど、その商品の需要を高める何らかの手を打つ必要があります。
時期によって需要が変動する商品の在庫には、特に注意が必要です。販売期間や時期、需要のピークを把握しておかないと、売れ行きが低下してしまい、過剰在庫につながってしまいます。例えば、「夏に必要な商品について、冬場には仕入れ量を減らす」といったように、季節や時期に応じて発注量を見直しましょう。
競合が多い商品や、大手企業が売り上げを占める商品は、思うように売れ行きが伸びないことがあります。特に新商品を販売する際には、同じ商品を扱う企業はないか、競合がある場合にはその企業の商品とどの点で差別化するかなど、下調べをすることが非常に重要です。
過剰在庫となってしまう前に、対策を講じることが必要です。ここでは、過剰在庫の発生を防ぐための対策について解説します。
在庫管理を徹底することは、過剰在庫を抱えないために欠かせません。在庫管理システムは、在庫数を管理するうえで非常に役立つツールです。システム上で在庫を一元管理して、実際の在庫数を可視化することが可能です。 商品の受注があった場合には、在庫数を確認しながら発注できるため、一度に多くの在庫を発注してしまうことを防止できます。 また、倉庫担当者に電話で在庫を確認したり、紙で受発注状況を記録したりする必要がなくなるため、業務の効率化、人的ミスの削減にもつながります。
一定期間内における販売数と発注数を比較して、適切な在庫数を把握しておくことも重要です。需要が少ない商品を追加で発注しても、過剰在庫を抱えてしまう可能性があります。また、あまり出荷されない商品の在庫を保管すると、時間が経ち品質劣化や廃棄につながるおそれがあります。 「どの商品がどの程度売れているのか」「商品ごとの出荷ペースはどれくらいか」というように、受発注の状況を分析することが非常に重要といえます。
需要予測を十分に実施していない場合、過剰発注や発注不足を招いてしまいます。過剰在庫が出ている場合には、今一度、需要予測の方法について見直してみることも有効です。正しい知識を身につけてデータの分析ができるようになれば、需要予測の正確性が高まります。
どれだけ在庫に気をつけていても、過剰在庫が生まれることはあります。 新型コロナウイルス感染症のように、突然のパンデミックによって市場経済が影響を受ける場合もあれば、新たな技術革新や顧客ニーズの変化によって需要が変わることもあります。 最後に、過剰在庫を抱えてしまった際の対処法について解説します。
比較的実施しやすい方法として、値下げしたり、セールを実施したりする方法があります。 値下げをする場合、割引額によっては十分な利益を得られないケースもありますが、廃棄費用のことを考えると、多少はマイナスを軽減できる可能性があります。値下げを試みても売れそうにないものは、廃棄を検討するとよいでしょう。 廃棄費用が気になる場合は、アウトレットストアを利用する方法もあります。訳あり商品と理解したうえで購入してもらえる可能性があります。
過剰在庫を抱えており、販売の見込みが立たない場合には、自社商品を購入した特典として、無料配布をする方法もあります。収益にはなりませんが、廃棄するよりも費用を抑えられます。顧客側としても、無料特典であれば、受け取ってもらうためのハードルは低いと考えられます。
品質の劣化や陳腐化によって売れなくなった商品の過剰在庫を抱えている場合は、廃棄処分を検討しましょう。社内で処分する場合には、時間・費用が発生することに注意しなければなりません。商品の大きさや規模によっては、追加の処分費用がかかる可能性もあります。事前に自治体のルールを確認して、必要な費用を用意しておくことが必要です。
余剰在庫を自社で処分するのではなく、買取業者に依頼することも一つの方法です。専門の買取業者に在庫を引き取ってもらえれば、商品の状態次第では、処分のための費用を削減できるだけでなく、多少の利益が得られる可能性があります。 商品の状態や需要を含めた査定次第では、引き取りのみの扱いとして利益を得られない場合もありますが、自社で処分する費用を抑えることが可能です。買取業者に依頼する際には、事前に対象商品や費用などについて確認しておきましょう。
過剰在庫を持つことは、保管や管理にかかる費用が増加したり、廃棄によって損失が発生したりするリスクがあります。このようなリスクを防ぐには、在庫を適切に管理する、商品の需要予測を立てるなどの対策をして、発注量や発注タイミングを調整することが重要です。 在庫を一元管理して、適正な量に維持するために、在庫管理システムを活用することも有効です。自社に適した在庫管理の方法を選び、在庫の最適化を図りましょう。
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